女性議員増やすカギは
全国の地方議会に占める女性の割合は14.0%ー。こんな現状が先月、『市川房江記念会女性と政治センター』(東京)の調査で浮かび上がった。三河地方の市町村議会でも、昨年春の統一地方選後の六月一日時点で、軒並み10~20%台=グラフィック=となり中にはゼロの自治体もある。女性議員増加のヒントとは。
昨年春の統一地方選で、前回より二人増となる六人の女性が当選した豊川市議会。議員と向き合う市側の席にも部長級以上の男性職員がずらりと並ぶ議場で、新人の加藤典子さん(四一)は当初、『私のような一人の母親が言うことを、ちゃんと聞いてもらえるのか不安だった』と明かす。
三人の子どもを育てる傍ら、親子で楽しめるイベントを運営する団体の代表をしていた一昨年夏、後継者を探していた地元の男性議員や町内役員らの目に留まり、『議員をやってみないか』と声を掛けられた。
それまで政治に対するイメージは『ふたを開けてはいけないもの』だった。公職に就く自信もなく、『私には向いていないから』と断った。背中を押したのは子どものためにと奔走する妻の姿を見てきた夫(三九)のひと言。『典ちゃんなら、できるんじゃないの?』
夫は高齢者施設の現場で働く。『子育ても介護も支えている人のほとんどは女性たち。女性の視点が議会に増えていけば、もっとバランスのとれた社会になるのでは』と感じていた。
町内役員らと話し合いを重ねるうちに、年配の男性たちも、自分と同じように次世代の子どもたちのことを考えてくれていると知った。『そんな人たちに支えてもらえるなら、やってみよう』と立候補を決めた。
当選後は子どもたちも家事に協力し、『ママが議会でかまないように』と議員が街の課題について市側の考えをただす『一般質問』の練習にも付き合う。『家族のサポートあっての議員活動』と加藤さんは言う。
初めての一般質問。母親として子どもを出産して幸せを感じる一方、育児に昼夜追われて自分を失った体験を交えながら産後ケア事業の充実を訴えると、市はその後、妊産婦ケアセンターの開設に動き出した。
『女性のリアルな現状や思いを、どうしたら共感してもらえるか。一滴ずつ垂らして広げていきたい』
出産・育児や介護などを担う当事者の意見を議会に反映させるには、加藤さんの例のように候補者の発掘や家庭との両立を図るための支援などが欠かせない。
加えて、議会に占める女性の割合が42.1%と県内トップの大府市議会で議員を4期務める鷹羽登久子さん(五三)は『女性自身が”女の人でもやれる”と思うことが大事』と話す。『意思決定の場は男性の仕事と思われがちだが、女性の視点があることで生活の実感がこもった政策ができる。少子高齢化や人口減少などに直面する地域こそ多様なアイデアが必要』という。
日常と政治との距離を縮めようと、女性議員自身による新たな試みも始まろうとしている。加藤さんと同じく、昨年春の統一地方選で初当選した豊橋市議の古池ももさん(三六)は、空き店舗を自ら改装し、さまざまな人が多目的に使える『みんなの居場所』を開く。
『女性は政治に関心が薄いといわれるが、むしろ地域の情報をたくさん持っていて意見もある。それぞれが抱えていることをおしゃべりしながら、”私も(議員を)やってみよう』と自然に思える環境もつくっていきたい』と話した。
二〇一八年には、政党などに男女の候補者数をできる限り均等にすることを促す『政治分野における男女共同参画推進法』ができた。国や自治体にも啓発活動や環境整備などに協力することが求められている。
女性議員数の推移を長年調査する市川房江記念会女性と政治センターの久保公子理事長(六九)は、『一般の女性が政治に関心を持ち、意思決定の場に参加していけるよう、みんなで日常的に仕掛けていく努力をしてほしい』と話している。(川合道子)
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